『双りの絆を守りきれ』参

「お前は昌浩じゃない…。」

聞きたくない…。

「昌浩じゃない者は必要ない。」

やめて…。

「お前なんか消えてしまえばいい。」

お願いだから…もうやめて…。

どんなに拒絶しても聞こえてくる声。

それは聞きなれた声ばかりだった。

闇の中で独りぼっちな俺に、皆がさらに追い打ちをかけてくる。

痛い…。

痛いよぉ…。

 

…昌紀もこんな想いをしてきたの?

 

 

 

急に意識が浮上する。

今までのは全て夢だったみたいだ。

それを知って、自分でも気付かないうちにほっと息をつく。

知らないまま、体が緊張していたみたいだ。

汗をべったりとかき、髪が肌にくっついていた。

コン、コン。

いきなりの音にビクッと震える。

さっきの夢のせいか、体を無意識のうちに身構えてしまう。

「浩紀、ご飯だって。母さんが呼んでる。皆待ってるから、早く来なよ。」

「…うん。ありがと。すぐに行くよ。」

「…大丈夫?」

一瞬、昌紀に何を言われたかがわからなかった。

「な、何が?」

「疲れた声してるから…。」

「別に、昼寝してたからじゃないの?」

「ならいいよ。でも、何かあったらすぐに言えよ。」

「わかってるよ。」

言い終わると、気がすんだのか扉から離れていく音がする。

「ふぅ…。やっぱ、隠し事できないなぁ…。

きっと昌紀は気付いているだろう。

俺がおかしかったことに。

でも、気付かないふりをしてくれたんだ。

浩紀は昌紀の優しさに感謝した。

あんな夢を見たなんて…昌紀には言いたくなかったから…。

 

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PARALLELⅡ