学校に行き、いつも通り授業を受けて終わった。
テストが近いので、昌紀の周りには人がたかっていて大変だった。
浩紀たちもその1部だが…。
最近は毎日学校が早く終わる感じがした。
それはきっと、とても楽しいからだろう。
燈湖以外にいなかった心友。
今ではたくさんの人とちゃんとした友達となった。
きっと、少し前にはもう戻れないだろう。
それぐらい、昌紀にとって大きかった。
テストも近いということで、学校が終わった後、すぐに勉強を始めた。
そんなとき、コンコンと控え目に扉が叩かれる。
「昌紀…ちょっといい?」
昌紀は、聞こえてきた声にひとつ返事を返す。
「どうぞ。」
そうすると、彩子がスッと入ってくる。
彩子の方を見ると、俯いていて顔がよく見えない。
そう言えば、さっきの声も少し元気がなかったように聞こえた。
何かあったんだろうかと考えていると、彩子が話し出す。
「…さっき、怖い夢を見たの。紹子は見てないらしいんだけど…。」
「とりあえず、ここに座ったら?その方がゆっくり話せるだろう。」
彩子の不安そうな声に、少しでも落ち着くようにと努めて穏やかな声で話しかける。
「うん…。」
彩子は言われたとおりに座ると、少し黙り、やがてぽつぽつと話し出す。
「…真っ暗な所にいるの。誰もいなくて…何もなくて…ただ、声が聞こえるの。『応え(いらえ)』って…。でも、答えたらだめな気がして…もし答えたら、もうみんなに会えなくなるんじゃないかって思って…。」
彩子はいつの間にか話しながら涙を流していた。
肩は震え、酷く頼りなかった。
そんな様子がせつなくて、昌紀はそっと、しかし力強く抱きしめる。
「彩子、怖かったね。よく頑張ったね。」
そう言って、頭をやさしくなでる。
昌紀から伝わる温度に、彩子は少しずつ落ち着いていく。
「夢で聞こえた声に、決して答えちゃだめだよ。その声は、彩子をとらえるものだ。」
「…うん。」
「一応、神将をつけてもらって、神器もお守りに持っておこう。彩子を守ってくれるように札を書いて。」
「ありがとう…。」
昌紀の優しさに、彩子は目を赤くしながら笑う。
「無理に笑わなくていいんだよ。辛い時や悲しい時は思いっきり泣いていいんだよ。」
「…う…ん。」
「俺ができることは何でもするよ。浩紀だって、彩子を守ってくれる。十二神将やじい様だって…。彩子は独りじゃないいんだ。いつだって皆に頼っていいんだ。」
昌紀の言葉に涙がとまらない。
「できるだけ、しばらく1人にならないようにしよう。また、夢や異変が起こったら言って。言うだけでも違うでしょ。」
「……うん!!」
NEXT…参
BACK…壱