先に動いたのは、昂然だった。
雄たけびを上げ、飛躍して浩紀の方に向かってくる。
紅蓮は昂然が来れないように、浩紀の前に立つ。
「浩紀には指一本触れさせない!」
と言いながら槍を出し、一閃する。
それを平然と昂然は、後ろに下がってよける。
しかし、そうなることを予測してたかのように、世明が真言を完成させる。
「―――縛!」
世明の真言により、昂然の動きが止まる。
その隙を見て、勾陣が昌紀を助けようとするが昂然が暴れ出し近づけなかった。
一瞬の隙を見て、青龍が後ろから大鎌で攻撃する。
「ぎゃあぁぁぁ!!!」
昂然の背中に浅い傷が入る。
痛みでさらに暴れた昂然は、昌紀を物のように青龍に向かって投げつける。
!!!
昂然の突発的な行動に皆は唖然とする。
しかし、一早く戻った勾陣が叫ぶ。
「青龍!!」
「わかっている。」
ひとつ返事を返すと、青龍は昌紀を衝撃が少ないように受け止める。
「うっ…。」
「昌紀…。」
「…お…れ…!!!昂然!!」
軽い衝撃で意識を取り戻した昌紀は、急に思い出したかのように構えをとる。
「昌紀、大丈夫?!」
「…ああ。さっきはごめん…。」
「全然平気。気にしないで。」
「そうじゃよ、昌紀。今は敵に集中するのじゃ。」
「わかってます…じい様。」
昌紀の言葉に、世明は忍び笑いを浮かべる。
懐かしい呼び方をしたからだ。
『じい様』
…ずっと昔、昌紀が幼い頃に呼んでいた呼び方だった。
そう。
昌浩の記憶が戻っていなかった頃の…。
世明は昌紀の声が聞こえてきたので、緩んだ口元を引き締める。
「ナウマクサンマンダバサラダン…」
その真言に浩紀や世明も声を合わせる。
「「「…センダマカロシャダソワタヤウン、タラタカンマン!!臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!急々如律令!!」」」
3人の真言にそれぞれの霊力がのる。
すさまじい霊力が昂然に襲いかかる。
しかし、世明の術をかけられていた昂然は逃げるすべもなく、3人の力の前に後もなく消えて言った…。
長い戦いはようやく終わったのだった。
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