『悲しき運命を打ち破れ』参拾参

先に動いたのは、昂然だった。

雄たけびを上げ、飛躍して浩紀の方に向かってくる。

紅蓮は昂然が来れないように、浩紀の前に立つ。

「浩紀には指一本触れさせない!」

と言いながら槍を出し、一閃する。

それを平然と昂然は、後ろに下がってよける。

しかし、そうなることを予測してたかのように、世明が真言を完成させる。

「―――縛!」

世明の真言により、昂然の動きが止まる。

その隙を見て、勾陣が昌紀を助けようとするが昂然が暴れ出し近づけなかった。

一瞬の隙を見て、青龍が後ろから大鎌で攻撃する。

「ぎゃあぁぁぁ!!!」

昂然の背中に浅い傷が入る。

痛みでさらに暴れた昂然は、昌紀を物のように青龍に向かって投げつける。

!!!

昂然の突発的な行動に皆は唖然とする。

しかし、一早く戻った勾陣が叫ぶ。

「青龍!!」

「わかっている。」

ひとつ返事を返すと、青龍は昌紀を衝撃が少ないように受け止める。

「うっ…。」

「昌紀…。」

「…お…れ…!!!昂然!!」

軽い衝撃で意識を取り戻した昌紀は、急に思い出したかのように構えをとる。

「昌紀、大丈夫?!」

「…ああ。さっきはごめん…。」

「全然平気。気にしないで。」

「そうじゃよ、昌紀。今は敵に集中するのじゃ。」

「わかってます…じい様。」

昌紀の言葉に、世明は忍び笑いを浮かべる。

懐かしい呼び方をしたからだ。

『じい様』

…ずっと昔、昌紀が幼い頃に呼んでいた呼び方だった。

そう。

昌浩の記憶が戻っていなかった頃の…。

世明は昌紀の声が聞こえてきたので、緩んだ口元を引き締める。

「ナウマクサンマンダバサラダン…」

その真言に浩紀や世明も声を合わせる。

「「「…センダマカロシャダソワタヤウン、タラタカンマン!!臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!急々如律令!!」」」

3人の真言にそれぞれの霊力がのる。

すさまじい霊力が昂然に襲いかかる。

しかし、世明の術をかけられていた昂然は逃げるすべもなく、3人の力の前に後もなく消えて言った…。

長い戦いはようやく終わったのだった。

 

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PARALLELⅡ