『悲しき運命を打ち破れ』弐拾捌

浩紀・世明、そして十二神将のメンバーで、紫乃女山に昌紀を助けに来ていた。

しかし、家を哉央だけにする訳にはいかないので、翁・玄武・朱雀・天后・白虎は家族や屋敷を守るように残して来た。

「薄暗くて気味が悪いね…。」

沈黙に耐えられなくなった浩紀が唐突に言う。

「ああ。おそらく、昂然を封印したのが原因だろう…。」

「それどういうこと?」

「この気は、昂然を封印する前にはなかったものだ。そして陰の気は、長い間昂然をこの場に縛り付けたことによるものだからだ。短時間で、こんなにも馴染むものではないからな。」

「そういうことか…。昂然が封印されている場所って、知ってるんでしょ?」

「…ああ。頂上近くの祠に封印してある。おそらく、そのあたりにいるだろう。」

その言葉に、少し気を抜く。

案外、遠いものだったからだ。

しかし、太陰の風により、だいぶ時間と距離が短縮されているので断然、本来のものよりましになっている。

「…!!来るぞ!」

そう、声を上げたのが誰かわからないまま、敵を警戒する。

もっくんも本来の姿に一瞬で戻る。

気を抜いたとたんこれである…。

これから、かなりの緊張が続くことになるだろう。

「バレてしまったか…。」

「「「「「「「!!!」」」」」」」

声がした方向を見た瞬間、皆一応に驚いてしまう。

それもそのはずだろう…。

そこには、ここに来る目的の昌紀が鎖響によって、檻に入れられていたのだから…。

「昌紀!!」

名前を呼んでみるが、昌紀からは返事が返ってこない。

いや…返事が返ってこないというのは明確ではない。

正しくは、聞こえてこないのだ。

おそらく、檻の外に声が届かない…檻の中に声が届かないということだろう。

「今…助けるから。」

「わしの孫を返してもらおう。」

世明の言葉に、鎖響は侮蔑を含んだ眼で見ながら答える。

「何を言っている。お前らは、こいつの何もわかって…いや、わかろうとしなかったくせに、今更どうこういうのは都合がいいんじゃないのか?」

と、鎖響は冷たく言い放つ。

しかし、その言葉は的を得ているのだ。

あまりに的を得すぎていて、浩紀たちは答えられない。

「フッ。やはり人間は愚かなものだ。いや、神将も愚かか…なぁ、血濡れの神将?」

鎖響の言葉に、紅蓮は再び固まってしまう。

「!!!」

「紅蓮、あやつの言うことなど気にするな。あいつの狙いは、お前を動揺させることだ。」

「…わかっている。もう、同じ過ちは繰り返さない。」

「いや、お前は傷つけることになるよ…再びな。」

「貴様!!何を根拠に言っている!」

紅蓮は激高し、語気を荒げる。

「いずれわかる。…安部 世明、決着をつけようぞ!!お前はここで倒してやる!」

「浩紀、ここはわしに任せるんじゃ。昌紀も必ず助けてみせる。お前は昂然のもとに行き、倒すんじゃ!紅蓮・勾陣・六合、浩紀についていけ。」

「わかった。」

「行くぞ、浩紀。原因の元を断たなければな。」

しかし、一向に浩紀は動こうとしない。

「浩紀、お前なら大丈夫じゃよ。」

「…昌紀を頼みます。」

世明の言葉に、昌紀の事をお願いし、神将たちとともに祠に向かっていった。

 

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PARALLELⅡ