浩紀・世明、そして十二神将のメンバーで、紫乃女山に昌紀を助けに来ていた。
しかし、家を哉央だけにする訳にはいかないので、翁・玄武・朱雀・天后・白虎は家族や屋敷を守るように残して来た。
「薄暗くて気味が悪いね…。」
沈黙に耐えられなくなった浩紀が唐突に言う。
「ああ。おそらく、昂然を封印したのが原因だろう…。」
「それどういうこと?」
「この気は、昂然を封印する前にはなかったものだ。そして陰の気は、長い間昂然をこの場に縛り付けたことによるものだからだ。短時間で、こんなにも馴染むものではないからな。」
「そういうことか…。昂然が封印されている場所って、知ってるんでしょ?」
「…ああ。頂上近くの祠に封印してある。おそらく、そのあたりにいるだろう。」
その言葉に、少し気を抜く。
案外、遠いものだったからだ。
しかし、太陰の風により、だいぶ時間と距離が短縮されているので断然、本来のものよりましになっている。
「…!!来るぞ!」
そう、声を上げたのが誰かわからないまま、敵を警戒する。
もっくんも本来の姿に一瞬で戻る。
気を抜いたとたんこれである…。
これから、かなりの緊張が続くことになるだろう。
「バレてしまったか…。」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
声がした方向を見た瞬間、皆一応に驚いてしまう。
それもそのはずだろう…。
そこには、ここに来る目的の昌紀が鎖響によって、檻に入れられていたのだから…。
「昌紀!!」
名前を呼んでみるが、昌紀からは返事が返ってこない。
いや…返事が返ってこないというのは明確ではない。
正しくは、聞こえてこないのだ。
おそらく、檻の外に声が届かない…檻の中に声が届かないということだろう。
「今…助けるから。」
「わしの孫を返してもらおう。」
世明の言葉に、鎖響は侮蔑を含んだ眼で見ながら答える。
「何を言っている。お前らは、こいつの何もわかって…いや、わかろうとしなかったくせに、今更どうこういうのは都合がいいんじゃないのか?」
と、鎖響は冷たく言い放つ。
しかし、その言葉は的を得ているのだ。
あまりに的を得すぎていて、浩紀たちは答えられない。
「フッ。やはり人間は愚かなものだ。いや、神将も愚かか…なぁ、血濡れの神将?」
鎖響の言葉に、紅蓮は再び固まってしまう。
「!!!」
「紅蓮、あやつの言うことなど気にするな。あいつの狙いは、お前を動揺させることだ。」
「…わかっている。もう、同じ過ちは繰り返さない。」
「いや、お前は傷つけることになるよ…再びな。」
「貴様!!何を根拠に言っている!」
紅蓮は激高し、語気を荒げる。
「いずれわかる。…安部 世明、決着をつけようぞ!!お前はここで倒してやる!」
「浩紀、ここはわしに任せるんじゃ。昌紀も必ず助けてみせる。お前は昂然のもとに行き、倒すんじゃ!紅蓮・勾陣・六合、浩紀についていけ。」
「わかった。」
「行くぞ、浩紀。原因の元を断たなければな。」
しかし、一向に浩紀は動こうとしない。
「浩紀、お前なら大丈夫じゃよ。」
「…昌紀を頼みます。」
世明の言葉に、昌紀の事をお願いし、神将たちとともに祠に向かっていった。
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