幼い頃…昌浩だったという記憶が戻った頃、俺にはつらい日々だった。
今まで当たり前だった態度が、全然違うように見える。
俺は昌浩の記憶が戻ったことで、昌浩の時にはあったものがないことを思い知らされた…。
じい様も十二神将も…紅蓮も…。
なぜ、俺だけがこんな想いをしなければならない?
なぜ、俺だけが独りぼっちにならなければならない?
なぜ、あいつの周りにはたくさんの者がいるの?
あいつは偽物なのに…。
俺が本物の昌浩なのに…!!
…許せない。
…許さない。
「フフフッ。やっと手に入れることができた。」
そう言ったのは…昂然。
昂然の目の前には、元佳と鎖響に連れてきてもらった昌紀が横たわっていた。
昌紀の周りは仄かな光が灯っていて、妖しい雰囲気を醸し出している。
そして、昌紀のそばには鎖響が何かをつぶやいていた。
一区切りついたのか、一息つくと主に報告する。
「昂然様、安部 昌浩は落ちました。」
鎖響の言葉に歓喜する。
昂然にとって、安部 昌浩はそれほど大きい存在なのだ。
それは、初めて会ったときから運命だった…。
昌浩と昂然の出会いはただ町の中をすれ違っただけだった。
しかし2人は、その時に運命的なものを感じていた。
…命がけの戦いになると。
昌浩は昂然必ず倒すと決め、昂然は昌浩の事を手に入れて見せると決めた。
そして、平安の時を超え、現代に…。
「今日、新たな同朋が入った。とりあえず、手始めに憎っき安部 世明を倒そうぞ!」
昂然は喜び笑み、昌紀を見ながら言う。
その言葉に、元佳と鎖響は頭を垂れて是を答える。
「「御意。」」
「ここに、昌紀が…。」
紫乃女山の入口には、浩紀たちが立っていた…。
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