『悲しき運命を打ち破れ』弐拾漆

 

幼い頃…昌浩だったという記憶が戻った頃、俺にはつらい日々だった。

今まで当たり前だった態度が、全然違うように見える。

俺は昌浩の記憶が戻ったことで、昌浩の時にはあったものがないことを思い知らされた…。

じい様も十二神将も…紅蓮も…。

 

なぜ、俺だけがこんな想いをしなければならない?

なぜ、俺だけが独りぼっちにならなければならない?

なぜ、あいつの周りにはたくさんの者がいるの?

あいつは偽物なのに…。

俺が本物の昌浩なのに…!!

…許せない。

…許さない。

 

 

 

「フフフッ。やっと手に入れることができた。」

そう言ったのは…昂然。

昂然の目の前には、元佳と鎖響に連れてきてもらった昌紀が横たわっていた。

昌紀の周りは仄かな光が灯っていて、妖しい雰囲気を醸し出している。

そして、昌紀のそばには鎖響が何かをつぶやいていた。

一区切りついたのか、一息つくと主に報告する。

「昂然様、安部 昌浩は落ちました。」

鎖響の言葉に歓喜する。

昂然にとって、安部 昌浩はそれほど大きい存在なのだ。

それは、初めて会ったときから運命だった…。

昌浩と昂然の出会いはただ町の中をすれ違っただけだった。

しかし2人は、その時に運命的なものを感じていた。

…命がけの戦いになると。

昌浩は昂然必ず倒すと決め、昂然は昌浩の事を手に入れて見せると決めた。

そして、平安の時を超え、現代に…。

「今日、新たな同朋が入った。とりあえず、手始めに憎っき安部 世明を倒そうぞ!」

昂然は喜び笑み、昌紀を見ながら言う。

その言葉に、元佳と鎖響は頭を垂れて是を答える。

「「御意。」」

 

 

「ここに、昌紀が…。」

紫乃女山の入口には、浩紀たちが立っていた…。

 

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PARALLELⅡ