『悲しき運命を打ち破れ』弐拾碌

ただ呆然とすることしかできなかった。

1人以外は…。

その1人はもちろん勾陣だった。

勾陣は、昌紀が昌浩だということに気づいていた、数少ない一人である。

「世明、私は今から昌紀を助けに行ってくる。」

「…知って、いたのか?」

あまりの同様のあまりに、声がかすれてしまう。

「ああ。昌紀に教えてもらった。」

その言葉に、茫然としていた紅蓮が激高する。

「そんな訳がない!昌浩は浩紀だ!!あいつの…忌子の言葉をうのみにしてどうするんだ!あいつは俺たちの事も見えないし、術も使えないほど力がないんだぞ。…昌浩のはずがない。」

「お前が気付かなかっただけだ、戯け者。お前が大切なのは、昌浩だけなのか?昌浩じゃない方は、必要ないのか?」

勾陣の言葉が紅蓮だけでなく、皆の心に伝わっていく。

「俺は…。」

「…昌紀は馬鹿だ…。」

「「「「「「「浩紀?」」」」」」」

「言ってくれればよかったのに…。俺たちは、双子じゃないのかよ!!」

悲しそうな顔をしながら、声を引き絞る。

そんな浩紀に、勾陣は教える…昌紀から聞いたことを。

「昌紀は、お前たちが大切だと言っていた。何より、浩紀が…。自分がした思いを浩紀にさせたくないと、お前たちを守りたいと。力も隠し、ひたすら自分を押し殺し、1人で戦っていた…。だから、私はそんな昌紀の力になりたいと思った。」

「…昌紀……。」

「そんな…。」

「…くちゃ。」

「えっ?浩紀、どうしたんだい?」

「昌紀を助けに行かなくちゃ。それで、怒らないと…1人で抱えるなって。」

浩紀の言葉に、皆是を答える。

「しかし、元佳と鎖響が生きていたとは…。」

初めて聞く名前に、浩紀だけが疑問を持つ。

「その元佳と鎖響って、何者なの?」

「元佳と鎖響は、まだ昌紀様や浩紀様が生まれていなかった頃に、世明様が倒した敵です。」

「それより、昂然がよみがえっていたとは…。」

その名前に、十二神将たちは悲しい顔をする。

「清明が死んでから、何があったのじゃ?」

その言葉に、十二神将たちは黙り込む。

しかし、そのままでいても何も始まらないので、代表して天空の翁が話し出す。

「…昂然と言うのは、昌浩が命を賭して封印した敵じゃ。あやつは、あまりに強すぎてわしらは、歯がまるで立たん勝った…。」

「そんなことが…。」

「確か…紫乃女山に封印したのよ。」

『紫乃女山』はあさぎ学園の反対側にある、霊峰の一つだ。

人々には、心霊スポットとして有名で、木が生い茂っている。

「そこに…昌紀が…。」

「行こう…皆。必ず、昌紀を助けるぞ。」

「「「「「「「ああ!!」」」」」」」

 

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PARALLELⅡ