体育祭も終わり、平凡な日常が戻っていた。
また、日曜日ということもあり、ゆっくりとした朝を昌紀は過ごしていた。
「今日は特に用もないから、読みたかった本でも読もうかな。」
コン、コン。
「昌紀、世明が呼んでいる。」
扉の向こうから、声が聞こえる。
この声はおそらく六合だろう。
六合が呼びに来るのは珍しい。
昌紀の事を呼んだり、ともにいたりするのは小さい頃から、玄武や太陰が多いからだ。
しかし、最近は勾陣に昌浩だということがバレたので、勾陣がそばにいるが多いので、この3人以外にはあまり接点がない。
「ありがとうございました。わかりました、今行きます。」
そう答えると、あまり遅くなるとぐちぐち言われるので、さっさと世明のもとへ行く。
世明の部屋は和室になっているので、ふすまを開けると浩紀がいた。
いったい何の用だろうと思っていると、じい様が奥の部屋から入ってくる。
「そろったか。」
「「はい。」」
「今日、呼んだのは一緒に行きたいところがあるんじゃ。」
世明が言った言葉に、昌紀は即効尋ねる。
「それは、拒否権はありますか?」
しかし、即答されてしまう。
「無理じゃ。」
あんまり浩紀たちといたくないんだよなぁ…。
もしかしたら、ぼろを出すかもしれないし…。
「じい様、どこに行くんですか?」
「昔にお世話になった方じゃ。失礼のないようにしなさい。」
「「はい。」」
白虎の風に乗っていくと、着いたのは貴船だった。
貴船とくれば、おのずと誰に会うのかがわかってくる。
そう。
貴船の祭神 高龗神。またの名を高淤加美神。
昌紀が昔、昌浩だった頃は高淤の神と呼ぶことを許してもらっていた。
スタッ。
白虎の風は安定していので、普通に降りることができる。
これが太陰の風になると、たいていの場合は尻もちをつくか、目を回すかのどちらかだ。
「高龗神、お久しぶりでございます。」
世明がそう言うと、高龗神が下りてくる。
というより、顕現する。
「久しいな、双子が生まれてきた以来か…。」
「はい。2人が大きくなりましたので、ご挨拶に参りました。2人とも、挨拶をしなさい。」
「「はい。」」
返事をし、片膝をついて頭を垂れる。
「お初にお目にかかります。双子の兄 昌紀と申します。以後、よろしくお願いいたします。」
「同じく、双子の弟 浩紀と申します。」
「そうか。これから、高淤と呼ぶことを許そう。」
「「ありがとうございます。」」
まあ、初めましてと言っても、昌紀は月1のペースでここに通っている。
最初に来たのは、記憶が戻ってきてしばらくしてからだった。
それから話し相手になったり、お酒を献上しに来たりしている。
「また来るがよい。」
「「「ありがとうございます。」」」
「では、そろそろお暇させていただきます。」
「ああ、わかった。」
そう言って、昌紀たちは家に帰って行った。
ピシッ。
ピシ、ピシッ。
パリーン!!!
「はははっ!!やっと出てくることが出来たぞ、安部 昌浩。待っていろ…必ず、お前を手に入れて見せる!!」
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