『悲しき運命を打ち破れ』弐拾弐

体育祭も大詰め。

ついに最後の競技、騎馬戦が始まる。

騎馬戦は、学年関係なく紅組、ピンク組、蒼組、水色組、白組全てが一気に戦う。

ルールは簡単で、相手の頭に巻いた鉢巻をとった数のポイントが多い方が勝ちだ。

得点は兵が10点、大将が100点だ。

大将の鉢巻がとられたり、馬から人が落ちたりすれば、強制的に負けになってしまうので、たいていは大将は動かない。

これは、どれだけチームで協力できるかが、勝敗の鍵だ。

 

「皆、落ち着いていこうな。これに勝てば、まだ優勝できるから悔いの残らないようにしよう!」

昌紀が話しだした瞬間、紅組の陣地が静かになる。

そして、昌紀の声に合わせて、皆が答える。

「「「「「「「おう!!」」」」」」

昌紀は騎馬戦の要、大将なのだ。

他の兵役の人たちは、紅組なので紅の鉢巻をつけているが、昌紀たち大将は金色の鉢巻をつけている。

これは、他のと区別をするためだ。

先生がステージの上にあがり、ピストルを上に掲げる。

「行くぞ!!」

と言った瞬間、バン!とピストルが鳴る。

一斉に兵役の人たちが走り出す。

白組以外は白組を狙い、白組は蒼組を狙った。

それは、白組がトップで蒼組が2位だからだ。

昌紀たち紅組は3位なので、上の組が負けない限りれ狙われない。

やはり、白組が1番に負けた。

大将の鉢巻をとったのはピンク組、ビリのチームだ。

 

昌紀たちは、4騎と一緒に自軍の陣地に残っていた。

「燈湖、俺たちも参加しよう。」

「マジかよ?!リスクが高過ぎる。」

「何言ってんの。逃げてたって、何も始まらない。俺たちは、勝負に出て勝つんだ!!皆はどうする?」

その言葉に、皆が答える。

「そうだよな。こんなんで勝っても、嬉しくないし。行こうぜ!」

「ああ、行こう!!」

「他の奴らを驚かしてやろうぜ!」

昌紀の言葉に、皆が是を答える。

これは昌紀の事を信じているから、皆が賛成した。

昌紀の日ごろの行いと人柄のおかげだ。

「出陣!!!」

一斉に戦いが起こっているところに向かって走っていく。

 

「なんだあいつら…。」

「紅組の大将が、攻めてきた!!」

皆が昌紀たちの行動に驚嘆した。

それほどあり得ないのだ。

大将が激戦区に入っていくなど、負けるつもりなのかと紅組以外は思う。

しかし、生徒会の人間や昌紀と中の良い人間はそうは思っていなかった。

昌紀は絶対に有言実行する。

その大胆な行動やカリスマ性は人を引き付け、畏怖さえも感じる。

紅組の大将たちに気を取られているうちに、ピンク組がやられた。

残りは3組。

紅組は分散して、大将を狙う。

そして、昌紀も自分から大将を狙いに行く。

「あと一息だ、頑張れ!!」

すると、残った蒼組みと水色組が昌紀を狙って走ってくる。

紅組は体制を整え、迎え撃つ。

しかし、昌紀の馬役の1人がこけて、態勢を崩してしまう。

「昌紀!!」

このまま落ちれば、負けてしまうだけでなく、昌紀が大けがをしてしまう。

「落ちるなよ!」

と言って、燈湖は昌紀を投げる。

それに合わせて、昌紀は他の馬に乗り移り、どんどん鉢巻を奪っていく。

これは騎馬が近かったので、できたことだった。

周りはあまりのすごさに、目を奪われてしまう。

燈湖たち昌紀の馬は、態勢を直す。

それを見た昌紀は、燈湖たちのもとにもどり、大きな声で叫ぶ。

「今がチャンスだ!一気に行くぞ!!」

その声に合わせ、次々に鉢巻を奪っていった。

蒼組は紅組の兵が鉢巻をとり、水色組は逃げまどうあまりにこけてしまった。

 

こうして、紅組が完全勝利した。

また、今日の出来事は昌紀の伝説の1つに加えられ、しばらくその話題でもちきりだった…。

 

NEXT…弐拾参

BACK…弐拾壱

PARALLELⅡ