『悲しき運命を打ち破れ』弐拾壱

「ただいまから1時まで休憩です。1時からすぐに、競技が始まりますので次の選手は整列しておいて下さい。」

そのアナウンスが流れた瞬間、皆が一斉に気を抜く。

「なあ、どこでご飯食べる?」

「とりあえず、親が持ってくるから取りに行かないと。」

「そっか。じゃあ、ここで食べようぜ。」

「了解。またあとでな、燈湖。」

「おう、昌紀もな。」

そう言って、2人は別れていく。

昌紀は親がいると思われる、保護者の観覧席に向かう。

「昌紀、さっきはすごかったな。」

常人には何も見えないところから、声が聞こえてくる。

しかし、昌紀は平然と返事をする。

「ありがとう。ねぇ勾陣、母さんたちがどこにいるか知らない?」

「たぶん観覧席にいると思うぞ。世明や哉央、昌央も。」

「えっ?!皆、来てたの?!」

「ああ。お前たちの頑張っている姿が見たいと言ってな。」

その言葉に、大変なことを思い出す。

「…じゃあ、あの姿も見られての…?」

少し声が震えながら勾陣に問う。

しかし、安心する答えが返ってきた。

「それは大丈夫だと思うぞ。途中から来ると言っていたからな。」

「…良かった。」

本当に良かった…。

あんな姿を見られるくらいなら、死んだ方がましだ。

「昌紀、こっちよ。」

観覧席から声をかけられる。

そっちの方を向いてみると、母親たちがいる。

「母さん。」

「遅かったわね、昌紀。浩紀はもう来てるわよ。」

「すいません。少し、混んでいたんです。」

「さっきのリレーすごかったぞ。」

「ありがとうございます、哉央兄さん。すいませんが、友達を待たしているので、行きますね。」

「一緒に食べないのかい?」

「はい、すいません。」

そう言うと、弁当をもらって急いで戻っていった。

 

 

 

1時になり、アナウンスが流れ出す。

「次は昼の部、プログラム12番借り物競走です。」

 

昌紀と燈湖は関係ないので、紅組のテントにいた。

「この次だな。」

「ああ。騎馬戦はけが人が多いから、お互いに気をつけような。」

「でも、上の昌紀の方が危ないぞ。」

2人が話している間も、借り物競走は続いている。

その中には浩紀もいた。

この借り物競走は、たくさんの種類の借り物が書いた紙が用意されていた。

校長、数学の先生全員、ホース、帽子など。

「昌紀!!」

いきなり走ってきて、声をかけてきたのは浩紀。

「何だよ。」

「ついてきて!お題、生徒会長なんだ。」

「わかった。燈湖、ちょっと行ってくるな。」

「頑張れよ。」

「ああ!行こう、浩紀。」

「うん。」

予想外の頼まれごとで少し驚いたが、嬉しかった。

昌紀も足が速いが、浩紀も速い。

だから、走って追い抜いていく。

周りは、めったにそろわない昌紀と浩紀の双子がいっしょにいるので、興味津津と見守っている。

「お題は何ですか?」

と係りの人に聞かれたので、お題の紙を見せながら

「生徒会長。」

「OKです。」

「協力してくれて、ありがとう。」

「いや、別にいいよ。じゃあ、次の競技があるから行くな。」

「ああ。」

少しずつだが2人のわだかまりがとけていった…。

 

NEXT…弐拾弐

BACK…弐拾

PARALLELⅡ