レジオンの眼は、アレンの知っている人にとても似ていた…。
大切な人をなくして悲しんでる、昔の自分の眼に…。
「まるで、昔の僕を見ているようです…。」
そうアレンが、泣きそうになりながら言った。
「…何を言っているんだ。お前に、お前に、何がわかる!化け物が!!復讐は遂げるまで、終わることはない!恐れるがいい!セレナの苦しみを必ず味あわせてやる!!」
「そんなことしたって、セレナさんは戻ってこないし、喜びませんよ。」
アレンの言葉に、レジオンは激高する。
「そんなの関係ない!あいつらは、セレナが死んだのに笑っていたんだ…。さも、おかしいかのように…。それなのに、なぜ許すことができる!」
いきなりクロスが話に入ってくる。
「お前、あいつと会ったな…。」
「あいつ?」
「何のことだ、クロス。」
そう言いながら、嫌な笑みを浮かべる。
「千年伯爵。そう言えば、お前ならわかるだろう?」
クロスから出てきた意外な名に、驚いてしまう。
そう言えば、最愛の人を亡くたのに、千年伯爵に取り込まれてないのはおかしい。
しかし、アレンの奇怪な左目は、何の反応も見せていなかった。
アレンの左目は、幼い頃にアレンの育ての親であるマナを生き返らしたときに、ついた傷である。
その傷がついてから、アレンはAKUMAの内蔵された魂が見えるようになり、人とAKUMAを見分けられるようになったのだ。
「でも、僕の左目は反応していませんよ。」
アレンの言葉に、クロスは平然と返す。
「レジオンは、世界クラスの科学者だ。こいつだったらたいていの物が創れるからな。おそらく、お前が倒れたのもこいつが創った物が原因だろう。」
「正解。さすがだね、クロス。それに、君の左目を反応させないようにしたのも俺だよ。」
そう言って、ゾッとするような笑みを浮かべる。
「あなたはAKUMA何ですか?!」
「違うよ。俺は、れっきとした人間。」
…どういうことだ?
レジオンは、僕の目を反応させないようにしたと言った。
しかし、彼はAKUMAじゃない…。
……他の狙いがあるということか!!
「コムイさん、おそらくAKUMAが忍び込んでるはずです!」
「何だって?!」
「…もう、遅いよ!!」
レジオンがそう言った瞬間、どこからか爆発音が聞こえる。
そして、すぐに建物全体が揺れていく。
「ハハハッ、ハハハハッ!これで、復讐が達成される!!」
「ラビ、行きましょう。速く僕たちが倒さないと、他の人たちが…。」
「ああ、わかってるさ。」
爆発の音がした方に行こうとしていると、いきなり師匠がアレンの腕をつかむ。
「俺が行く。お前は、こいつの相手をしておけ。」
「何でですか?!」
「とにかくだ。わかったな。」
師匠の言うことは、絶対だ。
アレンが嫌だということはできない。
「…わかりました。」
クロスはちゃんと考えて、アレンを残すのだ。
レジオンの事を1番理解できるのは、アレンだから…。
クロスとラビはさっさと行ってしまう。
この場には、アレンとコムイ、そしてレジオンが残っていた。
「…もし、関係のない人を傷つけていたら、僕はあなたを許さない!」
「ふっ、勝手に言ってれば?」
レジオンの言葉に、アレンはかっとなってしまう。
「なんてことを言うんですか!今のあなたは、あなたの恨んでいるセレナさんを見殺しにした人と同じことをしているんですよ!!」
「…何だと。」
「同じじゃないですか。怪我をさせているんですよ?それに、もしかしたら死んだ人も出たかもしれない…。」
「!!!」
「逃げてたって、何も変わらないんです…。セレナさんは、きっとあなたに自分の分も楽しく生きてほしいはずです。僕だったら、僕の事を忘れて幸せになってほしいです…。」
アレンに言われた瞬間、セレナの最後の言葉を思い出す。
―お、お願い…私を忘れて、あなたの幸せを見つけて?…私の分も幸せになって…。―
「俺は…間違っていたのか?セレナのためにと思っていたのに…。」
レジオンは茫然とし、涙を流す。
「人は過ちを犯すものだよ。でも、それと同時に償うこともできると僕は思っているよ。」
そう言ったのは、今まで静観していたコムイだった。
「そうです。これから、セレナさんの分も生きればいいんです。」
レジオンは崩れ落ち、ただ泣いていた…。
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