『LONELY THE GENIUS』Ⅷ

現在、東京では地区予選大会が行われていた。

それに出場している青学は、次に勝てば優勝することができる。

次の対戦相手は初出場の学校不動峰だった。

しかし不動峰は、シードの柿ノ木中を全く寄せ付けないほど強いのだ。

青学レギュラーたちも気を張り詰めていた。

今回の出場メンバーは、

ダブルス2は不二・河村

ダブルス1は大石・菊丸

シングルス3は海堂

シングルス2はリョーマ

シングルス1は手塚

 

 

 

桃城が補欠である。

前回の準々決勝でリョーマが補欠だったので、リョーマは暴れる気満々だ。

相手は、情報がほとんどない不動峰だ。

気を引き締めてかからなければならない。

 

 

 

青学対不動峰の試合は壮絶だった。

ダブルス2は、石田の波動球により、河村が腕を痛め棄権した。

ダブルス1は、圧倒的な強さにより、6-2で勝利。

シングルス3は、接戦の末に7-5で勝利した。

しかし、どのゲームも楽に勝てるものではなかった。

そして、今からリョーマの試合が始まる。

これに勝てば、優勝である。

リョーマの相手は、柿ノ木中で1番強い九鬼を倒した相手だ。

一筋縄ではいかないだろう。

だが、リョーマは強い相手と戦えることが嬉しくてたまらなかった。

手塚とテニスがしたくて来た日本だったが、手塚以外にも強い相手がたくさんいて、とても嬉しかった。

まだ、手塚と試合はできていないが、以外に今の生活を楽しんでいた。

「シングルス2の両者、コートへ。」

審判の声を聞き、試合に意識を集中させる。

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ青学サービスプレイ!!」

審判が高らかに声を出す。

その声に合わせ、今まで止まっていた空気が動く。

パン!!

リョーマは、空気を裂くようにラケットを振る。

打ったボールは相手のコートに入り、伊武の顔面めがけて飛んでいく。

「「「「「「「!!!」」」」」」」

青学以外の人たちは、1年レギュラーであるリョーマのツイストサーブに驚嘆する。

ツイストサーブは、中学生で打てるものはほとんどいない。

それも、リョーマのツイストサーブはキレも良く、すごい威力なのだ。

そんなサーブを最近まで小学生だった子が打ったのだ。

驚きもするだろう。

伊武は、最小限の行動でよける。

そして、サーブに続いて、どんどん点を取っていく。

「ゲーム1-0青学 越前リード。」

セットが終わり、サーブが伊武に変わると、いきなり伊武はぼやきだす。

「なんだよ…1年はもっと苦労するべきだろっ。」

「深司、そっくり返してやれ!!」

不動峰の部長である橘の言葉に合わせ、伊武はサーブを打つ。

そのサーブは、リョーマのものと酷似していた。

「ツイストサーブ?」

青学の人々は驚きを隠せずに声に出してしまう。

しかし、不動峰の人々は声をそろえて言う。

キックサーブと…。

「…キックサーブって、ツイストサーブじゃないんですか?」

カチローは、リョーマが打ったツイストサーブと同じものに見えたので、乾に聞いてみる。

「平たく言えば、同じだよ。ツイストは昔の呼び方だからね。でも、俺から言えば、微妙に回転や威力が違うけど…。」

「マジかよ…。こんな高度なサーブを打つ奴が2人もいて、それも地区予選の試合で見られるなんて…!!」

周りがざわめく中、伊武は冷静に問う。

「ねぇ、…キミさぁ、まだ何か隠してるでしょ?なんか違和感があるんだよな…。」

その問いに、リョーマは小悪魔のような笑みを浮かべ

「何のこと?」

「キミ、嫌な1年だなぁ…。」

 

2人は互いに、ミラクルなサーブを打ちながら、リョーマ有利の試合を進めていく。

「ねぇ、大石。相手の攻め方なんか変じゃない?上下の回転を交互にしているみたいなんだ。」

ビクッ。

リョーマの動きが一瞬止まり、ボールがその隙に綺麗に抜いていく。

今、一瞬動かなかった…。

右腕をぶんぶん振って、感触を確かめてみる。

しかし、異変は何もない。

気のせいかと思い、再び試合を開始する。

打ち合っていると、伊武がまた同じ方法で攻めてくる。

すると、リョーマの腕がまた、動かなくなった。

しかし、リョーマは無理やり体を回転させ、打とうとする。

その瞬間、ラケットがリョーマの右手から離れ、吹っ飛んでいく。

飛んで行ったラケットはポールにぶつかり、勢いのまま折れる。

そして、その折れたラケットは跳ね返り、リョーマの顔面めがけて飛んで行った…。

 

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PARALLELⅣ