現在、東京では地区予選大会が行われていた。
それに出場している青学は、次に勝てば優勝することができる。
次の対戦相手は初出場の学校不動峰だった。
しかし不動峰は、シードの柿ノ木中を全く寄せ付けないほど強いのだ。
青学レギュラーたちも気を張り詰めていた。
今回の出場メンバーは、
ダブルス2は不二・河村
ダブルス1は大石・菊丸
シングルス3は海堂
シングルス2はリョーマ
シングルス1は手塚
桃城が補欠である。
前回の準々決勝でリョーマが補欠だったので、リョーマは暴れる気満々だ。
相手は、情報がほとんどない不動峰だ。
気を引き締めてかからなければならない。
青学対不動峰の試合は壮絶だった。
ダブルス2は、石田の波動球により、河村が腕を痛め棄権した。
ダブルス1は、圧倒的な強さにより、6-2で勝利。
シングルス3は、接戦の末に7-5で勝利した。
しかし、どのゲームも楽に勝てるものではなかった。
そして、今からリョーマの試合が始まる。
これに勝てば、優勝である。
リョーマの相手は、柿ノ木中で1番強い九鬼を倒した相手だ。
一筋縄ではいかないだろう。
だが、リョーマは強い相手と戦えることが嬉しくてたまらなかった。
手塚とテニスがしたくて来た日本だったが、手塚以外にも強い相手がたくさんいて、とても嬉しかった。
まだ、手塚と試合はできていないが、以外に今の生活を楽しんでいた。
「シングルス2の両者、コートへ。」
審判の声を聞き、試合に意識を集中させる。
「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ青学サービスプレイ!!」
審判が高らかに声を出す。
その声に合わせ、今まで止まっていた空気が動く。
パン!!
リョーマは、空気を裂くようにラケットを振る。
打ったボールは相手のコートに入り、伊武の顔面めがけて飛んでいく。
「「「「「「「!!!」」」」」」」
青学以外の人たちは、1年レギュラーであるリョーマのツイストサーブに驚嘆する。
ツイストサーブは、中学生で打てるものはほとんどいない。
それも、リョーマのツイストサーブはキレも良く、すごい威力なのだ。
そんなサーブを最近まで小学生だった子が打ったのだ。
驚きもするだろう。
伊武は、最小限の行動でよける。
そして、サーブに続いて、どんどん点を取っていく。
「ゲーム1-0青学 越前リード。」
セットが終わり、サーブが伊武に変わると、いきなり伊武はぼやきだす。
「なんだよ…1年はもっと苦労するべきだろっ。」
「深司、そっくり返してやれ!!」
不動峰の部長である橘の言葉に合わせ、伊武はサーブを打つ。
そのサーブは、リョーマのものと酷似していた。
「ツイストサーブ?」
青学の人々は驚きを隠せずに声に出してしまう。
しかし、不動峰の人々は声をそろえて言う。
キックサーブと…。
「…キックサーブって、ツイストサーブじゃないんですか?」
カチローは、リョーマが打ったツイストサーブと同じものに見えたので、乾に聞いてみる。
「平たく言えば、同じだよ。ツイストは昔の呼び方だからね。でも、俺から言えば、微妙に回転や威力が違うけど…。」
「マジかよ…。こんな高度なサーブを打つ奴が2人もいて、それも地区予選の試合で見られるなんて…!!」
周りがざわめく中、伊武は冷静に問う。
「ねぇ、…キミさぁ、まだ何か隠してるでしょ?なんか違和感があるんだよな…。」
その問いに、リョーマは小悪魔のような笑みを浮かべ
「何のこと?」
「キミ、嫌な1年だなぁ…。」
2人は互いに、ミラクルなサーブを打ちながら、リョーマ有利の試合を進めていく。
「ねぇ、大石。相手の攻め方なんか変じゃない?上下の回転を交互にしているみたいなんだ。」
ビクッ。
リョーマの動きが一瞬止まり、ボールがその隙に綺麗に抜いていく。
?
今、一瞬動かなかった…。
右腕をぶんぶん振って、感触を確かめてみる。
しかし、異変は何もない。
気のせいかと思い、再び試合を開始する。
打ち合っていると、伊武がまた同じ方法で攻めてくる。
すると、リョーマの腕がまた、動かなくなった。
しかし、リョーマは無理やり体を回転させ、打とうとする。
その瞬間、ラケットがリョーマの右手から離れ、吹っ飛んでいく。
飛んで行ったラケットはポールにぶつかり、勢いのまま折れる。
そして、その折れたラケットは跳ね返り、リョーマの顔面めがけて飛んで行った…。
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