あるコートの周りが、異様にざわめいていた。
そのコートは現在、ランキング戦唯一の1年生リョーマと2年レギュラー海堂が試合をしていた。
どちらもハイレベルなプレーを繰り広げていた。
そして、その激しさと暑さのせいで両者ともすごい汗をかいていた。
「じわじわいたぶっていくのが、海堂(マムシ)のテニス…!」
「えっ?!」
「どういうことっすか、桃ちゃん先輩!!」
「あいつの得意技『スネイク』で、相手を左右に走らせて、体力を少しずつ奪っていくんだ。」
「ねぇ、すごい汗だね。上の服、脱いだら?」
その言葉に、海堂は自分が罠にはまっていたことに気がついた。
「あれだけ低い球を毎回足元に打たれれば、膝を曲げっぱなしでショットを打つことによって、通常の2~3倍は体力を使うことになる。
自分が攻めているつもりだったが、どんどん自分の反応が遅れていた。
そう。
相手をはめているつもりが、自分が罠にはまっていたのだ。
「策におぼれたな…海堂。」
そう言ったのは部長である手塚だった。
さっきまで、試合してたのに…
笑みを軽く浮かべ、いきなり越前がしゃべりだす。
「『スネイク』って、『バギーホイップ・ショット』の事でしょ?俺、あんたよりもっとキレのある『バギーホイップ・ショット』を打てる人とテニスしたことがあるよ。」
「何?!」
リョーマの言葉に、周りは驚く。
「乾。今、何ショットって言ったんだ?」
「『バギーホイップ・ショット』。大きなループを下から上に描き、遠心力を利用して、ボールに大幅なスピンをかけるショットの事だ。」
スパン!!
リョーマは下から上にラケットを振る。
そして、ボールは大きな弧を描き、海堂のコートに決まった。
「「「「「「「えっ?!」」」」」」」
「今、越前は何したんだ?!」
「越前が『スネイク』を打った!!」
越前の行動に驚嘆してしまう。
「海堂の『スネイク』はバギーホイップ・ショットを応用したものだ。テクニックがいるものだから、そう簡単に打てるものじゃないよ。」
手塚は乾の言葉を聞きながら、越前の事を考えていた。
テクニックか…。
それより気になるのは、明らかに越前が試合慣れしていることだ。
それも…相当力のある相手と…。
「ゲームセット!!ゲーム・ウォンバイ越前リョーマ6-4!」
「マ、マムシに勝っちまいやがった…。」
「まだ仮入部の1年が…青学のレギュラーに…!!」
それは、青学テニス部に電撃が走ったかのような出来事だった。
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