『LONELY THE GENIUS』Ⅴ

あるコートの周りが、異様にざわめいていた。

そのコートは現在、ランキング戦唯一の1年生リョーマと2年レギュラー海堂が試合をしていた。

どちらもハイレベルなプレーを繰り広げていた。

そして、その激しさと暑さのせいで両者ともすごい汗をかいていた。

「じわじわいたぶっていくのが、海堂(マムシ)のテニス…!」

「えっ?!」

「どういうことっすか、桃ちゃん先輩!!」

「あいつの得意技『スネイク』で、相手を左右に走らせて、体力を少しずつ奪っていくんだ。」

「ねぇ、すごい汗だね。上の服、脱いだら?」

その言葉に、海堂は自分が罠にはまっていたことに気がついた。

「あれだけ低い球を毎回足元に打たれれば、膝を曲げっぱなしでショットを打つことによって、通常の2~3倍は体力を使うことになる。

自分が攻めているつもりだったが、どんどん自分の反応が遅れていた。

そう。

相手をはめているつもりが、自分が罠にはまっていたのだ。

「策におぼれたな…海堂。」

そう言ったのは部長である手塚だった。

さっきまで、試合してたのに…

笑みを軽く浮かべ、いきなり越前がしゃべりだす。

「『スネイク』って、『バギーホイップ・ショット』の事でしょ?俺、あんたよりもっとキレのある『バギーホイップ・ショット』を打てる人とテニスしたことがあるよ。」

「何?!」

リョーマの言葉に、周りは驚く。

「乾。今、何ショットって言ったんだ?」

「『バギーホイップ・ショット』。大きなループを下から上に描き、遠心力を利用して、ボールに大幅なスピンをかけるショットの事だ。」

スパン!!

リョーマは下から上にラケットを振る。

そして、ボールは大きな弧を描き、海堂のコートに決まった。

「「「「「「「えっ?!」」」」」」」

「今、越前は何したんだ?!」

「越前が『スネイク』を打った!!」

越前の行動に驚嘆してしまう。

「海堂の『スネイク』はバギーホイップ・ショットを応用したものだ。テクニックがいるものだから、そう簡単に打てるものじゃないよ。」

手塚は乾の言葉を聞きながら、越前の事を考えていた。

テクニックか…。

それより気になるのは、明らかに越前が試合慣れしていることだ。

それも…相当力のある相手と…。

 

「ゲームセット!!ゲーム・ウォンバイ越前リョーマ6-4!」

「マ、マムシに勝っちまいやがった…。」

「まだ仮入部の1年が…青学のレギュラーに…!!」

それは、青学テニス部に電撃が走ったかのような出来事だった。

 

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