『LONELY THE GENIUS』Ⅳ

リョーマの処分はグラウンド50周。

そして、元木は退部した。

あれだけ恥をかき、リョーマを怪我させたのだ。

2度と部活には出れないだろう。

そして、部員にはリョーマの実力が広まった。

『弘法は筆を選ばず』と…。

 

 

 

青学のテニス部には面白い特徴があった。

それは、『校内ランキング戦』

校内ランキング戦とは毎月行うもので、2・3年生全員を4ブロックに分けてリーグ戦をし、その各ブロックの上位2名の計8名がレギュラーとして、各種大会への切符を手にする戦いである。

しかし、今回はかつてない空気に包まれていた。

ある者の参加によって…。

 

 

 

「男テニ、今日からランキング戦なんでしょ?」

「本当?見に行かなくちゃ!」

「そういえば、今回は仮入部の1年が1人出てるらしいよ。」

「まさかぁ。」

 

スパーン。

「また決まった!!」

「ゲームセット・ウォンバイ越前6-0!!」

その声に、周りは騒然とする。

それもそのはず。

仮入部の1年が、汗をひとつもかかず2連勝したのだ。

しかし、リョーマはそれを気にせず、すたすたを歩いてコートを出る。

「お疲れ様!!すごかったよ、リョーマ君。」

「お腹すいた…。」

「昼食の後にレギュラーの海堂先輩と試合して終わりだって。」

ホワイトボードの前に座っている大石に試合結果を告げると、ご飯を食べに行った。

 

リョーマはもくもくとご飯を食べながら、雑誌を見ていた。

そこには男子プロの1人ゲイル・ストレウスの特集が組んでいた。

「リョーマ君!!」

そう言いながら、駆けこんできたのはカチローだった。

「お前、その目どうしたんだよ?!」

カチローの左目にはボールの跡がくっきり残っていた。

「ちょっと頑張りすぎちゃって…。それよりも、これを見て!次に当たる、海堂先輩をとってきたんだ。」

「マジ?!見よ、見よ!!」

しかし、リョーマはじっと雑誌を見ていた。

「ゲイル…。」

「リョーマ君、せっかくとったのに見ないの?」

「別に、いらない。じゃあ、アップ行ってくるから。」

そう言って、リョーマはラケットを持って部室を出ていく。

日本に来る前の場所を思い浮かべながら…。

 

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PARALLELⅣ