『LONELY THE GENIUS』Ⅲ

ドコッ!!

!!!

鈍い音がコートに響く。

リョーマの体が衝撃で吹っ飛ぶ。

ドサッ。

痛みが体中に走る。

ラケットが頭に当たったのだ。

それも…勢い強く。

「リョーマ君!!」

「っ…。」

「大石、救急箱を頼む。」

「わ、わかった。」

手塚は指示を出すと、急いでリョーマの方に駆け寄る。

「大丈夫か?」

しかし、手塚の言葉はリョーマには届いていなかった。

リョーマは黙って、ゆっくり立ち上がり

「…ラケットの握りが甘い。まだまだね。」

「何だと!!」

リョーマは冷笑を浮かべる。

「ラケットを何だと思ってんの?」

血を頭から流しながら冷笑を浮かべる姿に、誰も動くことはできない。

そして、さらにリョーマは言葉を連ねる。

「俺のラケット、返してくれる?大事なラケットなんだ。ねぇ、聞いてんの?」

「うわあぁぁ!!!」

木本は叫んだと思ったら、走って逃げていく。

それと同時に、大石がテニス部の顧問の竜崎と一緒に走ってきた。

「大丈夫かい?リョーマ。」

竜崎がリョーマの名前を読んだことに驚いた。

一応、まだ顔合わせはしていないからだ。

「…最悪。」

とリョーマは、無表情で答える。

「ほら、手当するから傷見せな。」

「平気。自分でできるから…。」

と離れようとするが、それより早く竜崎が腕をつかむ。

「何言ってんだい。さっさとおし。手塚も一緒に来な。

「わかりました。大石、後は頼む。」

「わかった。」

「とりあえず全員、30周!!」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

その声に、皆我に返ったように動き出す。

「ほらリョーマ、行くよ。」

「うぃーす。」

そう言って、コートから出て行った。

 

 

 

「全く無茶をするねぇ~。」

「別に…。」

「さすがあいつの息子だよ。」

竜崎と話しながら、リョーマの意識は手塚の方に向いていた。

リョーマは手塚とテニスがしたくて、日本に来たからだ。

リョーマが初めて手塚を見たのは、青学のOBであるプロの徳川に見せてもらったDVDでだった。

その姿は鮮烈で、目を離せなかった。

圧倒的な強さ。

それに、綺麗なフォーム。

一瞬で、リョーマは魅いられた。

それからというもの、何度も徳川にDVDを持ってきてもらい、手塚の姿を見た。

憧れだったその気持ちが、いつの間にか一緒にテニスをしたいに変わっていた。

だから、日本に行かないかと言われた時、とても嬉しかった。

そして、たまたま南次郎の恩師である竜崎がいる学校に、手塚がいると知った時、嬉しすぎて泣いてしまった。

彼と、テニスがしたい…。

彼、手塚 国光とテニスがしたい一心で、リョーマは男としてここに来たのだった…。

 

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