ドコッ!!
!!!
鈍い音がコートに響く。
リョーマの体が衝撃で吹っ飛ぶ。
ドサッ。
痛みが体中に走る。
ラケットが頭に当たったのだ。
それも…勢い強く。
「リョーマ君!!」
「っ…。」
「大石、救急箱を頼む。」
「わ、わかった。」
手塚は指示を出すと、急いでリョーマの方に駆け寄る。
「大丈夫か?」
しかし、手塚の言葉はリョーマには届いていなかった。
リョーマは黙って、ゆっくり立ち上がり
「…ラケットの握りが甘い。まだまだね。」
「何だと!!」
リョーマは冷笑を浮かべる。
「ラケットを何だと思ってんの?」
血を頭から流しながら冷笑を浮かべる姿に、誰も動くことはできない。
そして、さらにリョーマは言葉を連ねる。
「俺のラケット、返してくれる?大事なラケットなんだ。ねぇ、聞いてんの?」
「うわあぁぁ!!!」
木本は叫んだと思ったら、走って逃げていく。
それと同時に、大石がテニス部の顧問の竜崎と一緒に走ってきた。
「大丈夫かい?リョーマ。」
竜崎がリョーマの名前を読んだことに驚いた。
一応、まだ顔合わせはしていないからだ。
「…最悪。」
とリョーマは、無表情で答える。
「ほら、手当するから傷見せな。」
「平気。自分でできるから…。」
と離れようとするが、それより早く竜崎が腕をつかむ。
「何言ってんだい。さっさとおし。手塚も一緒に来な。」
「わかりました。大石、後は頼む。」
「わかった。」
「とりあえず全員、30周!!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
その声に、皆我に返ったように動き出す。
「ほらリョーマ、行くよ。」
「うぃーす。」
そう言って、コートから出て行った。
「全く無茶をするねぇ~。」
「別に…。」
「さすがあいつの息子だよ。」
竜崎と話しながら、リョーマの意識は手塚の方に向いていた。
リョーマは手塚とテニスがしたくて、日本に来たからだ。
リョーマが初めて手塚を見たのは、青学のOBであるプロの徳川に見せてもらったDVDでだった。
その姿は鮮烈で、目を離せなかった。
圧倒的な強さ。
それに、綺麗なフォーム。
一瞬で、リョーマは魅いられた。
それからというもの、何度も徳川にDVDを持ってきてもらい、手塚の姿を見た。
憧れだったその気持ちが、いつの間にか一緒にテニスをしたいに変わっていた。
だから、日本に行かないかと言われた時、とても嬉しかった。
そして、たまたま南次郎の恩師である竜崎がいる学校に、手塚がいると知った時、嬉しすぎて泣いてしまった。
彼と、テニスがしたい…。
彼、手塚 国光とテニスがしたい一心で、リョーマは男としてここに来たのだった…。
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