『悲しき運命を打ち破れ』壱拾捌

「では、行ってきます。」

「待って、昌紀。今日、見に行くからね。一緒にご飯食べるでしょ?」

「役員の仕事が忙しいんで、たぶん無理です。」

「そう…。じゃあ、弁当をわけておくわね。」

「すいません。ありがとうございます。」

「いいのよ。頑張ってね。」

「はい。行ってきます。」

そう言って、学校に行く。

今日は、体育祭当日。

昌紀の学校、あさぎ学園の行事はとても豊富で盛大だ。

体育祭では、たくさんの屋台が並び、多くの人が応援に来る。

その多くの人々の狙いが、昌紀たち生徒会のメンバーだと、昌紀はまったく気づいていないが。

「待って、昌紀君。私も一緒に行っていい?」

そう声をかけてきたのは、彩子だった。

「断る。藤原さんはいつも、もう1人の藤原さんと浩紀とで学校に行ってるじゃないですか。」

「……よ。」

「…えっ?」

「彩子よ。私は、藤原じゃない。彩子よ!!」

その言葉に、昌浩だった時の事を思い出す。

こんな風に彰子も昌浩に言ってきた。

「ごめん、彩子。」

と、初めて彩子に向けて微笑む。

その笑みはとても綺麗で、彩子は見とれてしまう。

「でも、2人はいいの?一緒に行く約束してるんじゃないのか?」

「大丈夫よ。私、ずっと昌紀君と話してみたかったの。」

「昌紀でいいよ。」

「えっ?!」

「君はいらないって。同い年だろ?だから、俺も敬語はやめた。」

その言葉に驚く。

いつもの昌紀を全然違うからだ。

声も話し方も、表情も。

「ありがとう、昌紀!!」

昌紀がとても昌浩にかぶる。

皆は、浩紀が昌浩と言っていたのに…。

しかし、彩子には昌紀が昌浩にしか思えなかった。

 

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PARALLELⅡ