『LONELY THE GENIUS』Ⅰ

 

「なあお前、同じクラスの越前だよな?!そのラケットバッグ、お前もテニス部に入んの?!」

と話しかけてきたのは、ラケットを持った男の子。

同じクラスと言っているということは、クラスが同じなのだろうが、リョーマは見覚えがなかった。

「誰?」

「堀尾だよ。お前、知ってる?ここのテニス部、名門だからめっちゃ強いらしいぜ。」

うっとおしいなぁ…。

リョーマは、堀尾の話を無視して歩いていく。

しかし、テニスコートがどこにあるのか分からないのを思い出し、堀尾に尋ねる。

「ねぇ、テニスコートって、どこにあるの?」

「お前、そんなことも知らないで行こうとしてたのかよ!そっちじゃない、こっち。」

と言って、リョーマを誘導していく。

すると、すぐにテニスコートが見えてくる。

コートの数も豊富で、設備も意外に良かった。

それに、綺麗に使われていた。

「今日は3年生とレギュラーの2年生がいないから、仮入部は明日からだって。」

そう話しかけてきたのは、先にいた1年生の2人だった。

「ほとんどの1年生は帰っちゃったけど、僕たちはちょっと打っていこうかなと思って。」

あたりを見ていると、先輩らしき人がやってくる。

「「「「ちわーす。」」」」

「なあ、この中に越前 リョーマっているか?」

「へっ?おい、越前!お前何したんだよ!!」

しかし、名前を呼ばれる覚えがない。

そもそも、話しかけてくる人も見たことがない。

「俺ですけど、何すか?」

「へぇ~お前が例の『越前 リョーマ』か…。俺は、2年の桃城 武。なあお前、今から俺と試合しないか?」

その言葉に、笑みを軽く浮かべる。

「いいっすよ。」

その言葉に、周りの人は驚いた。

 

「なあお前、マジで2年のレギュラーと試合すんのかよ?!」

それを無視して、ひたすらテニスをする準備をする。

テニスをするのは久しぶりだ…。

最近はこっちに来る準備に忙しかったからだ。

おそらく、テニスをするのはJr大会以来だろう。

こっちに来るまでに、リョーマは男子の部16歳以下の大会に4つ出た。

そして、すべて優勝してきた。

それは、日本に来るための条件の1つで、協力者の1人から出されたものだった。

「おい桃、マジでやんのかよ?だって、お前「まぁ~いいじゃねぇか。」

林の言葉を遮る。

「でも…。」

しかし、さらに林は言い募ろうとする。

桃城はそれを無視し、コートに入っていく。

「こっちは準備できたぜ。お前は?」

「大丈夫っすよ。」

「フィッチ?」

その言葉に合わせ、桃城はラケットを回す。

「スムース。」

カラン。

「ちっ、スムースかよ。お前、どっちとるんだ?」

「…サーブ。」

「あの…俺、審判やってもいいですか?!」

と堀尾がいきなり提案する。

誰も審判する人がいなかったので、了承する。

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ越前サービスプレイ!!」

ひゅっ。

リョーマはボールを高らかと上げ、綺麗なフォームでラケットを振り落とす。

スパン。

そのボールは、速いスピードで相手のコートに突き刺さる。

「はえぇぇ!!」

「いきなりエースをとりやがったぞ…!」

「マジかよ…お前、そんなに小さい体してんのに、なんでそんなにサーブが速いんだよ。」

その言葉に、少しムッとする。

「小さいは関係ないじゃないっすか…。」

と不貞腐れたように答える。

「15-0」

「次、行くよっ。」

審判の声が聞こえると、次のサーブの準備をする。

ポーン、ポーン。

とボールをバウンドさせると、さっきと同じように打つ。

しかし、先ほどと違って、ボールはバウンドした瞬間、桃城の顔面めがけて向かっていく。

「!!!」

パアァァァン!

桃城のラケットははじけ飛び、地面に落ちる。

「今のサーブなんだよ…。」

「桃の顔面に向かっていったぞ。」

「リョーマ君すごい!!」

小さい1年が打ったとは思えないほどのサーブに、皆が動揺していた。

「…ツイスト…サーブ。」

「なんだよそれっ?!」

「一般的に皆が打つ、左回転のスライスサーブの逆の回転のサーブですよ!!でも、打球はスライスサーブと違って、トップスピン気味に跳ねるんです。」

「要するに、顔面めがけてくるサーブってことか…。」

「俺、ツイストサーブ見るの初めてですよ。」

「そんなにすごいサーブなの?!」

「ああ。まず、中学生でこのサーブが打てる奴なんて、めったにいねぇよ。」

それも、最近まで小学生だったリョーマが打ったのだ。

皆の驚きは止まらない。

「まだ、続けるんすか?」

「いや、やーめた。もういいぜ。」

その言葉に、「ありがとうございました」と言って、コートを出ていく。

「おい桃城、1年に舐められたままでいいのかよ?!」

「お前の右足の捻挫さえ治ってれば…。」

「いやっ。あいつ、俺の脚の事気づいてたぜ。」

ランキング戦が楽しみだな…と、桃城は笑みを浮かべていた。

 

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