真っ白の部屋の中にあるベッドに金髪の女の子が横になっていた。
彼女はいたるところに包帯が巻いてあった。
部屋にはほとんど家具がなく、殺風景である。
そして、ベッドの横には彼女の父がいた。
南次郎は、娘のために考えてみたことを言ってみる。
「リディー、少しここを離れて、俺の母国日本に行ってみないか?」
リディアの反応はあまりなかった。
しかし、父親である、南次郎の提案を頭の中で少し考えていた。
別に行くのはいい…。
ただ、やってみたいことがある。
しかし、それは1人では絶対にできないことだ。
「……お願いが…あるの…。」
その言葉に、南次郎は驚いた。
リディアはあまり頼みごとをしたことがないからだ。
彼女はいつも自分で全てを解決しようとするので、周りの力はあまり借りない。
だから、彼女の願いをできるだけかなえてあげたいと思った。
しかし、彼女は天の邪鬼なので、変にならないようにいつものように振る舞う。
「なんだ?」
その言葉に、リディアはゆっくりと話し出した…。
青春学園中等部。
今ここでは、入学式が行われている。
「…新入生代表、越前 リョーマ。」
そしてたった今、新入生代表があいさつを終えたところだ。
普通、入学式では何人かは眠っているものだ。
しかし、現在は誰もいない。
それは、新入生代表を務めた、越前 リョーマの美貌に見とれているからだ。
さらさらと流れる漆黒の髪、こぼれ落ちそうな大きな瞳。
そして、あどけなさの残った仕草や高い声が、人々を魅了していた。
しかし、本人はまったく気づいてはいなかった…。
それに、答辞をしていたくせに全く他の事を考えていた。
…彼を見つけたから。
日本に来る目的だった、彼を。
リョーマの願いは、絶対に1人ではかなえられなかった…。
そのために、たくさんの人が協力をしてくれたのだろう。
中には、自分の知らない者もいるだろう。
その者たちに感謝しながら、これからの学園生活に胸を躍らせていた。
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