『悲しき運命を打ち破れ』漆

「「あの、今日からお世話になります。」」

と髪の長さだけが違う、同じ顔の女の子2人が言う。

礼儀正しい子に好感をもった世明は、優しく微笑んだ。

「いえ、こちらこそ何のおもてなしもできないが、自分の家だと思って過ごして下され。」

「「ありがとうございます。」」

 

 

 

「今日迄に体育祭の日程を決めなければいけませんね。」

「ああ。でも、昌紀が学校に来てないらしいぞ。」

「そうなんですか?!あの会長が?」

「俺も聞いたときはびっくりした。あの真面目で優等生な昌紀が、学校をさぼるなんてありえないからな。」

「そうですよね。僕も信じられません。」

「さっ、生徒会室に着いたぞ。気持ち切り替えて、仕事がんばるか。」

「はい。」

そう言って、扉を開く。

生徒会室は新校舎の5階にある。5階には生徒会室しかないので、生徒会以外はあまり生徒は来ない。

書類は大体、会長の机に置いてあるので、取りに行く。

しかし、大きな机の端から誰かの手が見える。

「おい、大丈夫か?!」

驚いて近づいてみると、それは昌紀だった。

呼吸が浅く、顔が真っ赤だ。

「昌紀!!!おい、登也(とうや)!誰か先生を呼んで来い!!昌紀がすごい熱で、倒れてる。」

「えっ?!は、はい!!」

そういうと、走って部屋を出ていく。

「ずっとここで倒れてたのか?…あんまり無理すんなよ。」

昌紀の上半身を起こし、自分にもたれさせる。

頬を軽く叩きながら、意識があるか確かめる。

「おい、昌紀!昌紀、大丈夫か?」

「ん…ん。」

昌紀はゆっくり瞼を開いた。

「はぁ、はぁ、はぁ。…海翔(かいと)?」

弱弱しくも昌紀が答えたので、肩の力を抜く。

しかし、熱が高いことに変わりわないので、焦る気持ちを抑えながら先生を待っていた。

 

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PARALLELⅡ