…どこだ。
どこにいるんだ…安部 昌浩。
必ずお前を……。
「はぁ、はぁ、はぁ…。嫌な夢…。今何時だ?」
布団から出て、時計を見てみるとすでに7時半を過ぎていた。
昌紀はいつも、7時半には家を出る。それは、他の皆に会わないようにするためだ。
しかし、今日は昨日の夜警をいつもより遅くまでやったので、寝坊したのだ。
「やばっ!早くしないと、皆と会っちゃう…。」
なんで、寝坊しちゃったんだろう…。
いつもだったら、絶対しないのに。疲れてるのかなぁ?
そういえば、今日いつもよりだるいけど…まぁいいや。
とりあえず急ごう!
いろいろ考えているうちに着替え終わり、急いで下に降りて行く。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「おはよう。今日は遅かったな。寝坊でもしたのか?」
「はい。ちょっと…。」
ほのかに赤かった顔をさらに赤くする。
「ははっ。まったく昌紀は可愛いなぁ~。」
「何言ってるんですか、哉央兄さん!男なのに可愛いなんて言われても、嬉しくありません。」
「でも、本当に可愛いよ。昌紀は。だって、僕たちの弟だからね。」
昌紀は一瞬驚いた顔をして、うつむく。
「…ありがとうございます。それでは、もう学校に行きますから、行ってきます。」
そう言って、昌紀は少し急いでリビングを出ていく。
「なんだか、今日の昌紀は昔に戻ったみたいでしたね。」
「ああ。なんだかぎこちなかったが。」
「僕は今の昌紀の方が好きです。」
「そうだな。俺も今の昌紀の方が好きだ。あいつは何を抱え込んでいるんだろうな…。」
「はい。昌紀も頑固ですからね。」
「ああ。もうちょっと、俺たちに話してくれてもいいのに…。」
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
なんだか体が熱い…。
それに、頭も痛くなってきた…。
でも、体育祭が近いから生徒会の仕事しないと、大変なことになる。
クラっ。
目の前が歪んだと思うと、体がどんどん傾いていく。
バタッ。
椅子から落ちた瞬間、意識が闇にのまれていった…。
NEXT…碌
BACK…嗣