『悲しき運命を打ち破れ』壱

―――12年後

「いってきます。」

その言葉を返す者はだれもいない…。

 

 

 

「浩紀、そろそろ起きろ!」

「う~ん、あと5分…。」

「あと5分じゃない!さっさと起きないと遅刻するぞ!!」

「んん…。」

「……六合、浩紀の布団を頼む。」

そういった瞬間、何もない所から六合が現れる。

六合は浩紀のかぶっている布団を思いっきり剥ぐ。

「うわあぁぁ!!」

「起きたか、浩紀。」

「もう、もっと優しく起こしてよ!」

「なら、さっさと起きろ。」

「浩紀~、遅刻するわよ。」と母 露樹の声が聞こえてくる。

時計を見ると、すでに8時15分を過ぎていた。ここから学校に行くには20分かかるので完全に遅刻でだ。

「やばい!!遅刻だあぁぁ!!!」

 

 

 

「はぁ、はぁ…なんとか間に合った。」

「全く…。さっさと起きないからだ。」

 

 

 

「だって、毎日遅くまで夜警をしてるんだからしょうがないじゃないか。」

「昌浩はもっとしっかりしてたぞ。」

「そんなこと言われても、覚えてないものはしょうがないじゃん。」

 

俺はここにいるよ…。

昌浩はここにいるんだよ…。

……紅蓮…。

 

「大丈夫か、昌紀?」

「うん。ごめん、燈湖。」

「別にいいけど…。そういえば、また告られたんだって?!」

「なんで知ってんの?朝の事なのに…。」

「そりゃ生徒会長様のことなんて、すぐに広まるに決まってんだろ?」

「最悪…。」

「でも、ミスあさぎを振るなんて、もったいないよ。」

「好きでもないのに、付き合う方が最低だろ。」

「さすがモテモテの昌紀は言うことが違うよな。」

「それは嫌味か!」

「別に、うらやましいなって思っただけ。」

「うっとおしいだけだよ…疲れるし…。」

「昌紀……。」

燈湖は俺が『昌浩』の生まれ変わりだって知っている親友だ。『珂神 比古』の生まれ変わりで、もゆらとたゆらも双子の弟として生まれ変わっている。

燈湖は俺の家の事情も知っていて、たくさん心配をかけてしまっている。

「なぁ昌紀、1時間目の英語の宿題の答え見せて!!」

「また、やってないのか…。」

「うん!!」

「そこは威張って言うところじゃないから…。」

 

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PARALLELⅡ