『LONELY THE GENIUS』ⅩⅡ

「部長、2歩下がって下さい。」

リョーマの言う通りに2歩後ろに下がると、その場所にちょうど良くボールが来る。

それをスマッシュで海堂と桃城の間に上手く打ちこむ。

この試合はあまりに圧倒的なものだった…。

もちろん…リョーマと手塚の。

周りで傍観していた者たちも、皆唖然としていた。

「マジ?!あの手塚とおちびがダブルスしてる…。」

「…ああ。興味深いデータだ。ぜひ今後の参考にしなければな。」

話している間にも、次々にリョーマと手塚にポイントが加算されていく。

そして、早くもマッチポイントを迎えていた。

「部長、きちんとしめますよ。」

「…ああ。」

リョーマは当然のことのようにやっているが、手塚は本当に驚いていた。

まあ、顔には出していないが…。

それもそのはず。

今まで、誰ひとりとして合わなかったダブルスが、1年レギュラー(ルーキー)としてきちんとしたものが出来ているのだ。驚かない方がおかしいだろう。

「部長、右ストレート。」

「わかった。」

またしても、リョーマが言った言葉が見事に当たる。

シングルスなら自分のことだけを考えればいいので手塚たちもできるが、ダブルスは相手のことも考えなければならない。そんなものをリョーマは、どうやって予測しているのだろう…。

スパン!!

「ゲームセット 6-0越前・手塚!」

「すごい…本当に勝っちゃったね。」

見ていたものが口々に2人を褒めていく。

「なぁ、越前。お前、どうやって俺たちが打つ所を予測してたんだよ。」

それは手塚や他の皆も聞きたいことだった。

桃城の質問にリョーマは一瞬、何を言っているんだという顔をして「えっ?」という。

リョーマをよく見てみると、すごい汗をかいていた。

以前、桃城とダブルスをした時と同じように…。

リョーマは体力がかなりあり、汗をたくさんかくこと自体が珍しい。

それに、息もかなり上がっていた。

リョーマは一回呼吸を吐いて落ち着かせると、とても簡潔に言う。

「どうやてって…計算してるだけっス。」

「「「「「「「はぁ?!!」」」」」」」

意味がわからない者たちが一斉に声をそろえる。

そして、それを代表して手塚が越前に問う。

「越前、計算とはどういうことだ?」

「だから俺と部長、桃先輩と海堂先輩の動き力の強さ、風や環境を含めて計算して、動いたり言ったりしたってことっス。」

「…つまり、君は試合をしながら計算をしてたんだね。…それも、かなり難しい計算を。」

しかし、リョーマは平然と答える。

「別に難しくなんかないっすよ。」

否。

実際にはふたつの作業を一緒にやりながら計算するのは、あり得ないことだ。

…常人には。

「おちび…やっぱり、何かかわってるにゃ。」

 

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