心の中の奥の方に、そっと隠している想いがある…。
だけど、それには気付いていはいけない。
気付かれてはいけない。
この想いだけは、絶対に…。
今の自分で、在り続けるためには…。
「アレンくん。ちょっといいかい?」
そう呼んだのは、コムイだった。
仕事かな?と思いながら
「なんですか?」
と聞く。
「クロス元帥から、アレンくん宛てに手紙が来てたんだけど、僕の所に混じってたみたいで…。」
と手紙を渡す。
「えっ?!」
まさか、師匠から手紙が来るなんて、思いもしなかった。
師匠とは、インドにいた時に金づちで頭をたたかれ、逃走された以来だ。
そして、師匠からの手紙は、いいことが絶対ない。
逆に、悪いことが起きるほどだ。
意を決して、手紙の封を開けていく。
「えっと…『馬鹿弟子、17日に帰るから、酒と女を用意しとけ。クロス』。」
「クロス元帥が返ってくるなんて、珍しいね。」
「…今日って、17日でしたよね?ってことは、今日じゃないですか!!」
「そうだね。」
「おい馬鹿弟子、酒と女は用意しといたか?」
いきなり声をかけてきたのは、手紙を送ってきた張本人。
「し、師匠…。」
恐る恐る名前を呼ぶ。
しかし、女は勝手に集まるからいいとして、どうにかしてお酒を用意しなければならない。
それもクロスは、安いお酒は飲まない。
わざわざ、高いお酒を飲むのだ。
「さっさとしろ、馬鹿弟子!」
「すいません。…今、手紙を見たばかりなんです…。」
言いたくなかったが、嘘言っても仕方がないので、本当の事を言う。
その言葉にクロスは
「…役立たずが。」
とはっきり言う。
「すいません…。」
アレンは小さく謝った後、下を向いた。
こうして、アレンの師匠クロス・マリアンが教団に返ってきたのだった…。
NEXT…Ⅰ