「ねぇ、ねぇ。あの席の子って、なんで学校に来ないんだろうね?!」
「そうだよね。入学式からもう、1ヶ月もったってるのにね。」
そう言って、自分のクラス…1-1にある誰も座ったことのない、窓際の一番後ろの席を見る。
「いじめられて、不登校なんじゃないの?!」
「あははっ。それ、あり得るかも。」
「えっ?!私、病気で来れないとか聞いたよ。」
「そうなの?!」
「ここか…。」
そう言ったのは、FILAの帽子を深くかぶった、私服の男の子。
彼が持っているのは、大きな目立つ赤いラケットバッグ。
立海大学付属中学。
ここは今日から通うことになる、学校だ。
「とりあえず、職員室に行って挨拶しないとな…。」
と言って、歩き始める。
さすがに、学校の中を私服で歩くのは目立つ。
ちょうど休み時間だったらしく、生徒のほとんどがリョーマが歩いているのを見ている。
「こんなところで、何をしているんでだい?」
誰かが、いきなり後ろから声をかけてくる。
後ろを振り向くと、優しげな顔をした人と中学生には見えない人が立っている。
「職員室を探してるんですけど、どこにあるか教えてもらえますか?」
「かまわないよ。真田、僕はこの坊やを職員室に連れて行ってくるから、よろしく。」
「幸村。それなら、俺もついていこう。」
「そうかい。僕は別にかまわないよ。それでいいかい、坊や?」
「あの、さっきっから『坊や、坊や』って、俺には越前 リョーマっていう名前があるんだけど!!」
「ごめん。それじゃあ、リョーマって呼んでもいいかい?」
「別に良いけど…。」
「幸村、職員室はこっちだ。」
と左の方を指して言う。
「すまない。話に夢中になっていたようだ…。」
「別に、職員室につけたらいいっすよ。」
「幸村さんに、真田さんでしたっけ?授業大丈夫なんっすか?」
「大丈夫だよ。ねぇ、真田。」
「ああ。お前が気にすることはない。」
「それならいいんですけど…。」
「ここだよ、リョーマ。」
止まったとこの目の前の扉の上に『職員室』と書かれている。
「ありがとうございました。」
「別にいいよ。リョーマみたいな可愛いこと一緒に入れて、楽しかったよ。」
「可愛くなんかいっス。」
と軽く頬を膨らませながら、ふてくされたように言う。
しかし、リョーマはその姿さえ可愛いことに気づいてはいなかった。
「じゃあね、リョーマ。」
「はい。」
そう言って、幸村と真田は廊下を歩いて行った。
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